E'b vol.190



vol.190 気を見るに敏



ある火曜日に息子の大空と職場で朝の挨拶を交わした数分後、私は「今日はえらい姿 勢がいいね」と声をかけました。その変化に私が気づかないはずありません。なぜな ら入社以来毎日のように「姿勢が悪いぞ」と注意し続けてきたからです。少なく見積 もっても三日に一回は伝えてきましたので、三年間で300回以上でしょう。理由を尋 ねてみると、前日に講習会で出会った美容師さんから「大空くんは姿勢がよくないね、 姿勢がよくないと自信がなく見えるよ、お客様は自信がある美容師と自信がない美容 師とでは、どちらに担当してもらいたいと思う?」と尋ねられたそうです。息子はイ ンスタグラムを通じてその方を以前から尊敬していたようで、私が将来を憂えて幾度 となく言い聞かせても、全く耳をかさなかったにも関わらず、憧れの人の「ひとこと」 には大きく心を動かされたようです。 



 いくら大きな声で力強く注意しても、相手は変わらないものです。他人から「そこが 悪い」と指摘されてあらためる。それだと、正したフリをすることも多いでしょう。 一時的にあらためたように繕うだけです。自分で気がついて変えていくようでなけれ ば、真の成長はありません。(中略)そして、本人が自分のいたらなさに気づいたと きに、すかさず「それは、いいところに気がつきました。大切なことです」とほめる のです。すると、そのひとは同時に「ほかにも何か悪いところがあるのではないか」 と考えはじめます。 『素直な心に花が咲く』池田繁美著(モラロジー研究所)より 



 言葉とは「何を言うか」ではなく、「誰が言うか」が大切であるように思います。私 は常々、その「誰か」に値する生き方をしたいと願っていますが、今回は残念ながら 私の出る幕はなかったようです。しかしながら息子の憧れの人が、初対面にも関わら ず美容師としてこれからの人生を歩んでいく上で「本当に大切なこと」を丁寧に伝え てくださったことは、本人にとっては勿論ですが、私にとっても「かけがえのない喜 び」でした。心より感謝いたします。今年もよろしくお願いします。

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