E'b vol.173
vol.173 美容業の成就
美容師として幸せに生きていくために、知識と技術を身につけよう。そして、素敵なヘ
アスタイルを提供しよう-−。20代の私は、そのような一心で仕事終わりに毎晩レッスン
を積み重ね、月曜日は毎週講習会に足を運んでいました。いいヘアスタイルを作ることが
美容師の仕事という思いで、エネルギーのすべてを注ぎ込んでいました。そして30歳を過
ぎた頃、修行先の会社で人間学を学ぶ機会を与えられ、それでは不十分である事を学びま
した。「専門的知識・技術」(付属的要素)は「人間の徳性」(本質的要素)によって正し
く生かされる。「人間の徳性」とは「思いやり」であり、人との関係を良好に保つためには
欠かすことができないということでした。確かに「どれだけ上手いか知らんけど、勝手に切
られた」という話は意外と多いものです。我が身を振り返ってみても、私は自分勝手な思い
込みや自己中心的な判断により、これまで数多くの失敗を繰り返してきました。
人間は樹木と同じです。根がしっかりせずにグラグラしているようでは、風が吹くと、すぐ
に倒れてしまいます。わたしたちが「この木はりっぱだ」というときには青々と茂った枝葉
や太い幹につい目がいってしまいますが、ほんとうは目に見えない土の下にある根が大き
くてりっぱなのです。 「月刊素心 第281号 仕事の成就」より
立派な枝葉である「専門性」を正しく生かすには、根っこである「人間の徳性」(思いやり)
を磨くことが必要だったのです。決して「専門性」はボチボチで構わないという話ではあり
ません。「専門性」は「人間の徳性」をしっかりと身につけると、伴ってくるでしょう。お役
に立ちたい、喜んでもらいたいと、自ずと努力せずにはいられなくなるからです。「私が身
につけたから皆さまも」と言いたいところですが、残念ながら私自身が反省の毎日です。だ
からこそ限られた時間とエネルギーを、若い頃は見向きもしなかった方向に、しっかりと注
いでいこうと思います。なぜなら、それが「美容業の成就」へのかけがえのない道だと信じ
ているからです。
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