E'b vol.144

vol.144  末広がりの人生



六十年の歴史を持つ中華の名門「小倉飯店」は小倉北区堺町の大型中華料理店ですが

小倉生まれ小倉育ちの私にとって、かけがえのない思い出の味がここにあります。バ

スに乗って家族四人で小倉の街に繰り出し、予め電話予約した個室で、和気藹々と食

事をするのです。オーダーは、焼き餃子、やわらかい焼きそば、白ごはん、ビール、

オレンジジュースと決まっており、毎回それ以上も以下もありません。ある日オーダ

ーの際に店員の女性が「それだけでいいんですか。エビチリとか八宝菜とかもありま

すよ。いかがですか。」と尋ねましたが、小学生の私はその意味を理解することがで

きませんでした。食べたことがなかったからです。今思えば田舎育ちの両親が贅沢を

慎んで、生活をやりくりしてくれたおかげで、子供の頃から私がやりたいと申し出た

ことや、進学や結婚そして開業などの人生の節目に際して、惜しみない応援をしてく

れたのです。




プロ野球のドラフト一位で入団したピッチャーがいました。最初は成績が良くて年棒

も上がり、豪邸を建てて華やかな結婚式を挙げました。やがて何かの事情で調子をく

ずして二軍に落ち、収入が激減して、マスコミにも登場しなくなりました。家を手放

し、奥さんにも見放され、失意のうちにみずからいのちを絶ってしまいました。尻す

ぼみの人生の典型です。この逆のかたちが、一番幸福を感じられるのではないでしょ

うか。経営もまた然りだと私は思います。「いい会社をつくりましょう。」塚越 寛 著




末広がりの人生を求めるなら、若い時のスタートは何事も低い方がいいように思いま

す。身なり、車、住まいなどに関して、身の丈に合わない暮らしぶりの若者を見かけ

ると、ついつい心配してしまいます。昨年、美容学生の息子が運転免許を取得しまし

た。そこで知人のご厚意により走行距離16万キロ、12年落ちの車を格安で譲って

頂きました。息子にはこれから最初の相棒と共に、願わくば地を這うように緩やかな

右肩上がりの人生を歩んでもらいたいと思います。ありがとうございます。

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